かれこれ1ヶ月以上も前に買って枕元本(注)になっていた高野秀行の新刊「ミャンマーの柳生一族」をようやく読んだ。著者は「ホントかよ」と思われるようなものを探して世界各地に遠征する辺境作家である。今度の旅の様相はこれまでとは違っていて早大探検部出身の先輩作家である船戸与一のミャンマー取材旅にガイドとして同行した顛末記なのだが、あらかじめお膳立てされた快適旅らしいので「らしくないな」と少し用心しながら読み進んだ。
 しかし、そこはやはり高野秀行だった。ミャンマーの「いま」を日本の江戸時代にスルドクあてはめ、その国情、社会構造というものを見事に浮き彫りにしてくれている。アウン・サン将軍=徳川家康、スー・チー=千姫、軍部=柳生一族、軍情報部=裏柳生といった具合だ。
 ミャンマーなどといわれても、この空気頭にはこれまでスー・チー女史を軟禁状態に置いているオドロオドロシイ軍事独裁政権の国ぐらいのイメージしかなかったが、どうやらミャンマーという国とその人々は世界の現状とか趨勢というものとはおよそかけ離れところにある、まさに江戸の鎖国日本であった。久々の高野本であり、目からウロコの本だった。
  
    (注)マクラモトボン 寝る前に読む本で未読のものを含めおよそ10冊前後が枕元に置いてある