会社帰りに立ち寄った書店で「面白南極料理人 笑う食卓」が平積みになっているのを見つけミズテンで買ってすぐさま読んだ。著者、西村淳さんの前作「面白南極料理人」は以前に読んでいた。この人は現役の海上保安官で、若い海猿たちに囲まれて今も巡視船に乗務しているらしいのだが、過去に2度、南極観測隊に技師・調理担当として参加している。その体験を綴ったのが前作、そして料理にまつわる話を前作に大幅に補足し掘り下げたのが今回の作品というわけだ。
 南極観測隊というと有名なのはなんといっても昭和基地ということになるが、実は日本が維持管理している拠点がそのほかにいくつかあって、この著者が38次隊で越冬したしたドーム基地は、設備の整った昭和基地から内陸側にはなれること1,000km
標高3,800m、平均気温−57℃、最低気温−80℃、ウィルスさえその生存が許されない極寒の地であるという。飲料水や生活用水は絶えず氷を溶かして作り続けなくてはならないし、火力も十分ではない、標高のため水の沸点は85℃といった所での「調理担当」というものを想像してもらいたい。
 その上、9人の男が共同生活するのだから当然そこには人間関係のきしみというものも生じてくる。著者はそれをたくみにユーモアで包み込んで語っている。著者自身、時たま頭にに血が上るとまさにストレートで「きおつけーーー!!姿勢を正して注目する!」と相手に号令というか金縛りをかけ説教をはじめるのだ。
 さまざまな障害にぶつかった時のこの著者の、根っからの楽天家ぶりと、サバイバル的な発想、それにパワフルな行動力が前作にまして痛快だった。
 料理のレシピについては、この著書は新作でもあるので前作からひとつパクる。カレーを作るのにガラムマサラがない場合、ハウスジャワカレーに太田胃散を小さじ1杯入れるとそれらしき味になるそうである。