『アマゾンの巨魚釣り』醍醐麻沙夫著(つり人ノベルズ)。昨年、ブラジルアマゾン流域に関する本を読み漁っていた時期があった。この著者に『アマゾン・クライマックス』という本があるということは知っていたのだが、すでに絶版で古本屋でも見つけられなかった。偶然、書店の本棚を眺めているときにこの本を見つけ手にとってみると、『アマゾン・クライマックス』に1章を加筆したものだった。すぐさま購入。
 著者は、開高健『オーパ』の取材旅行に現地世話人として同行したこともある当時ブラジル在住の作家。ブラジル移民の取材で現地を訪れているうちに、アマゾンの生態系や、とりわけその生態系の頂点に立つ巨大魚ピラルクに魅せられ、一度釣ってみたいという夢にとりつかれてゆく。
 ピラルクを求めてのハンモック携帯の旅や、人々のくらしが興味深い。そして何より生命力に溢れ華麗ともいえるアマゾンの生態系への著者の畏敬の念といったものが行間に滲む。
 ピラルクは、1億年前の太古から姿を変えずこの地球上に生息しているという。1億年前といったら恐竜が生息していた最後の時期と重なるのだ。それに比べたらわれわれヒトなど・・・。
 著者はある光景を目にして、ピラルクを釣り上げるという10年にもわたる自らの悲願を断念する。自ら感傷的だと思いながらも以下の言葉でこの著書を締めくくっている。引用する。「ピラルクよ!おれはおまえを殺すのはあきらめた。しかし、おまえを殺す力だけはいつまでも持ち続けるつもりだ」