『アマゾン河の食物誌』醍醐麻沙夫著(集英社新書)
『アマゾンの巨魚釣り』に続いて同じ著者による最新刊を読んだ。アマゾン地域の人々の食べ物を、そのくらし、風土にからめて紹介した本。アマゾンとひとくちに言っても広大な地域であるのでその都市、水辺、森などに分けて語られており、実際に自分がアマゾン流域を旅している気分にもなる。
 主食はインディオの時代からマンジョッカ芋(キャッサバ)だそうだが、実にアマゾンの自然に適した植物らしい。熱帯だから植物の生命力は概して強いのだろうが茎を切って土に挿し木するだけで成長するらしい。この植物10株でひとりの人間を1年養えるというのだ。それならアマゾンの動物たちもこの芋を掘り出して食べてしまいそうなところだが、幸いこの芋には弱い青酸毒があるらしく、人間だけがこれを過熱して無毒化したり、すりおろして毒を洗い流して食用にしているらしい。ちなみにアマゾンでは野菜畑もよほど開けたところでない限り現実的には作れないらしく、放し飼いしている豚や鶏が芽が出たとたんに食べられてしまうと言う。
 この本では圧倒的な種類の生息する河の生き物に関する記述が多い。アマゾンでは海の魚より河の魚が圧倒的に旨いと言う。ピラニア、ナマズ、ツクナレ、ピラルク、タンパキ、デンキウナギ、またカワエビ、ワニ、カメなどなど。どちらかというと魚好きの僕など、ヨロイナマズの塩焼きのところで「内臓と脳みそが旨い」「身の方はついでにちょっとつまむていど」などと書かれると、未知の味なのに涎がでてきたりして困った。
 それに、この本では僕もかつて夢中になって読んだ、ヘンリー・W・ベイツ『アマゾン河の博物学者』、アルフレッド・R・ウォレット『アマゾン河探検記』、神田錬蔵『アマゾン河』などの著書からの引用も多くあり、何ともうれしかった。