『ロビンソン・クルーソーを探して』 高橋大輔著(新潮文庫)
 昨年の今頃だったか、新聞にデフォーの『ロビンソン・クルーソー』のモデルとされるアレクサンダー・セルカークの居住跡が発見されたという記事を見た。その中に発見者としてこの著者の名があった。この本は刊行当時から知ってはいて、読もうかどうか迷ったまま後回しになっていた本だったのだが、おくればせながら読んだ。
 著者はおよそ300年前のセルカークの足跡を追って故郷のスコットランドに渡り
古い文献にあたったり、セルカークがとり残され4年4ヶ月を暮らした南米チリ沖に浮かぶサン・フェルナンデス島(現在はロビンソン・クルーソー島に改名)にテント生活で滞在、セルカークの見張り台(既に確定されているらしい)を中心として、居住した可能性の高いエリアを想像力を駆使しながら自らの足で踏破してゆく。
 この文庫版は当初刊行されたものに新たに1章を加え、著者がセルカークの居住跡らしき石造りの建築物を発見するまでの探索記録となっているが、昨年の発見はこの石造りの建築物はセルカークによるものではなく、その調査の折、その下の地層に焚き火跡などの居住跡が発見され、同時に見つかった航海用ディバイダー(コンパス)でセルカークのものと確定されたらしい。
 この発見はまさに著者の想像力が結実したものといえるのだろうが、Google Earth
でロビンソン・クルーソー島を覗き込みながら、足掛け14年にもわたる著者の情熱と脚力に感服している。