青い地図ーキャプテン・クックを追いかけてー トニー・ホルヴィッツ著 バジリコ
 キャプテン・クックによる3度にわたる航海距離は計32万キロにおよぶという。地球8周分、これは月までの距離に相当するのだそうだ。それも200年余り昔の、帆船による航海なのだ。
 ジェームズ・クック。日本ではなじみがうすいが、欧米での彼の功績に対する評価は大変高いものだと言う。歴史学者のバーナード・スミスは「他の誰よりも世界をひとつにすることに貢献した」と評したそうだ。
 そんなクックの最後(3回目)の航海の航路を著者自身が18ヶ月かけて辿った航海記録が本書。著者はピューリッツァー賞を受賞したことのあるアメリカ人ジャーナリストだそうだ。
 本書では、全長わずか30メートルの帆船に94名の乗組員と生きた羊や豚、家禽をのせての厳しい航海の模様や、クックが訪れた島々の現在の様子やクックの痕跡探し、クック来訪を当時の現地人たちがどう感じたかを取材してまわる著者の考察、クックの人物像といったものが織り交ぜられながら、ユーモアたっぷりな文章で描き出されている。
 クックという人は、航海日誌等によると、いい意味で冷徹な人であったらしい。また、自らが次々に対峙することになる未開の文化・異文化といったものに、いつも敬意を払い、かつ威厳をもって接していることに好感が持てたのだった。
 上・下刊にわたり、じつに楽しく読み応えのある航海紀行だった。