リビア砂漠探検記 石毛直道著 講談社文庫
 長い間探していた本だった。73年に単行本として刊行されている。「探検記」となると目がない僕が、この本のことを知ったのはすでに絶版となってからだった。
 インターネットというのは大したもので、古書店の目録の中に発見して、すぐさま取り寄せ、ようやく読むことができたのだった。
 著者は、のちに国立民俗学博物館館長も務めることになる文化人類学者の若かりし頃。前半は著者ともうひとりの学者が、リビア砂漠のなかのオアシスに自分たちのテントを張って住み込みながら、オアシス・砂漠の農民・遊牧民の生活を学術調査してゆく模様と、その分析が語られる。
 圧巻は後半。同行の学者と別れた著者は「なんぞおもしろいことをしたろう」と考え、商人たちが乗り合うトラックに同乗し、サハラ砂漠を南へ縦断、アフリカ大陸のサバンナ地帯が始まるあたりまでの過酷な旅の過程が語られる。道なき道を南下するトラックは、タイヤが砂にはまり込んでしまったり、砂嵐にあったり、果てはゲリラの襲撃にあったりもする。
 この本の中で、砂漠地帯の遊牧民の主食は「ナツメヤシの実」とあったことに心惹かれた。あいかわらず、食べ物にいの一番に興味を示すオノレが卑しいとは思うのだが、ナツメヤシの木が3本あればヒトは1年飢えることはないのだそうだ。ナツメヤシの実? ん! ん! となった。で、食べてみた。甘くて、干し柿みたいな食感だった。
 石毛先生の著書をはじめて読んだのだったが、本物の「フィールドワーカー」の気概といったものの一端に触れられたみたいでうれしくなり、いっぺんにファンになってしまった。早速、手近なところから著書を2冊購ってきて読んでいる。